そうべつ人の暮らし
移住者インタビュー
前橋 史子さん

壮瞥町役場 地域おこし協力隊ヨツカド商店コーヒーとおやつ担当 前橋 史子さん

青森県青森市出身
▶ 東京都
▶ アメリカ・ニューヨーク州
▶ 神奈川県横浜市
▶ 壮瞥町
<移住歴8ヵ月>

「食」をキーワードに、想いが交差する場所を。

1つ目の"曲がり角"は、
コーヒー。
人生初と言える衝撃的な
一杯と出会う。

人生には、新しい景色が見える"曲がり角"が、いくつかある。
今回の移住者インタビューの主人公、前橋史子さんにも、心が惹かれる人生初の出会いがあり、素直にその"角"を曲がった。それが、コーヒーとの出会い。
ただし、新しい景色が見える角に立つまでには、様々な経験と行動力が伴っていたようだ。
「青森県青森市の出身です。いつかは自分の店を持ちたいという漠然とした夢を持ち、東京の大学に進学。そこで建築を学びました」。
当時はまだ、自分の店=コーヒーではない。というのも、大学卒業後の就職先は少し変化球だ。
「アップルジャパンに就職しました。そこで、売り場づくりや空間デザインに関われたらと思い入りました」。
数年後に留学のためニューヨークへ。建築を学び直し、現地のインテリアデザイン会社に就職した。
「当時、アメリカでは、サードウェーブコーヒーブームが来ていて、『ブルーボトルコーヒー』がニューヨークにも出店攻勢を始めた頃でした。私が就職したインテリアデザイン会社ではブルーボトルコーヒーの店舗設計もしていたので、勉強を兼ねて街の小さなコーヒー屋さんを巡り、コーヒーにも興味を持つようになりました」。
3年間のニューヨーク生活を終えて帰国。前橋さんは、日本にも面白いコーヒーショップはないだろうかと探し始めた。すると、横浜の家から2駅先のところに、運命の出会いは転がっていた。

2つ目の"曲がり角"は、
人との出会い。
コーヒーとチーズ、
そして、農園キッチン。

「華やかな香り、まるで果物を食べているかのようなフルーティーさ。こんなコーヒーがあるのかと衝撃を受けました」。
豆の特性を知り、それを最大限に生かすための焙煎と、ハンドピックを丁寧に行うことで生まれるおいしいコーヒー。店ではセミナーも開催しており、前橋さんは思いきって講座に参加。その時に口にしたコーヒーの味が、人生を変える体験となった。
「最初は週末だけのバイトという形でお手伝いしていました。スイーツもおいしいし、自然派ワインや調味料も良いものを扱っているお店で。何よりもコーヒーは、焙煎が素晴らしくて。この店のコーヒーに出会わなければ、今のような生き方はしていなかったと思います」。
店の名前は「Mui(ムイ)」。前橋さんは「Mui」のコーヒーを一人でも多くの人に味わってもらいたいと、全国のコーヒーフェスに参加するなど、地方にも出向くようになった。
その頃に知り合ったのが、今井真希さんという女性。二つ目の"曲がり角"となる出会いだ。
真希さんは大学で酪農とチーズ製造を学び、ナチュラルチーズに精通していた。チーズと他の食材との食べ合わせを提案していた真希さんは、コーヒーとチーズの組み合わせもおいしいと教えてくれた。
そこで、当時「店舗を持たないコーヒーとおやつ屋」としてもイベントなどに出店していた前橋さんは真希さんが営む「mikoto fromage」とコラボしてコーヒーとチーズを楽しむ会を開いたり、真希さんの知人のりんご農園の一角を借りて、果樹や野菜の生産者とパンや菓子職人、料理人が集まる「食」のイベントに挑戦した。
「イベント名称は「農園キッチン」。「作る人、調理・加工する人、食べる人みんなが近い距離感で関われる環境が豊かだなと感じる経験でした。そこから移住を考えるようになり、候補地を探し始めました」。

3つ目は、移住という
大きな"曲がり角"。
2家族4人の「ヨツカド」が
壮瞥町で交差する。

「引っ越し先は、青森のように四季がはっきりしていて、ウィンタースポーツも楽しめる環境がいいと考えていたところ、夫が北海道もいいよねって(笑)。私自身も、小学生の時に修学旅行で見た昭和新山が印象に残っていて、洞爺湖エリアで検討し始めました」。
そんな移住計画を、真希さんにも話した。すると、今井さん家族と一緒に北海道旅行へ出かけることに。
「移住地として人気の東川町や函館市にも行きました。でも、壮瞥町の雰囲気がやっぱり好きで。『西いぶり6市町 オンライン移住イベント』に参加し、相談に乗ってもらえたことも大きかったです」と前橋さん。
1つの町だけではなく、周辺市町の特徴などエリア全体の情報を得たことが有益だったという。現在暮らす中古住宅もその時に知り合った人から紹介してもらい、話はスムーズに進んでいった。
移住担当者との出会いやコーヒーの道に進んだ先輩移住者など、魅力的な人々との出会いが、壮瞥町移住の決め手になった。
「2020年11月、2021年2月の2回北海道を巡りました。その中で、壮瞥町のことをもっと知りたいし、自分たちのことも知ってもらわないとたとえお店を開けたとしてもお客さんに来てもらえないと考え、壮瞥町の地域おこし協力隊の募集を探しました。すると、運良く3月に募集が出まして!しかも、今井さん(真希さんの夫・亮輔さん)も応募することに(笑)」。
2021年5月、2人そろって、壮瞥町地域おこし協力隊に採用された。それとほぼ時期を同じくして、移住に先立つ第一段階であるオンラインショップの『ヨツカド商店』を立ち上げた。
コーヒー担当、前橋さん。チーズ担当、今井真希さん。ワイン担当、今井亮輔さん。そして、川崎で大手メーカーの技術職を続ける前橋さんの夫は、2拠点生活をしながら都会と壮瞥をつなぐ"橋渡し担当"。
4人それぞれの夢が交差する『ヨツカド商店』は、壮瞥町で大きな一歩を踏み出した。

壮瞥町民2年生。
町の人が教えてくれた体験を
観光資源としてつなぎたい。

現在、前橋さんは、地域おこし協力隊「観光プロデューサー」として、壮瞥町の観光を盛り上げる仕事をしている。新しい観光コンテンツの発掘、ポスターやリーフレットなどのデザインを担当するなど、町のイメージづくり・情報発信強化計画に携わっている。
「もともとキャンプや釣り、スノーボードは大好きですが、関東に住んでいる時は数ヵ月に1回程度。渋滞に巻き込まれることも多く、何をするにも時間が掛かっていました。でも、壮瞥町では町内のキャンプ場なら車で20分ほどと気軽。湖や山も身近にあり、洞爺湖でヒメマス釣りも初体験し、とても感動しました。町の皆さんは私一人では行きづらい場所も案内してくれて、貴重な経験がたくさんできて感謝しています。
まだまだ知らない場所や魅力がたくさんあるのですが、教えてもらうだけでなく、それらを観光資源としてつなぎ、魅力あるコンテンツに昇華させたいです」。
休日は、徒歩や自転車で町内を散策しているという前橋さん。小学生の頃から魅了されていた昭和新山を、通勤途中に毎日眺められる生活も気に入っている。
「道の駅では採れたての野菜や果物が安く手に入り、肉などは町内にあるAマートで買えますし、宅配も利用しています。隣の伊達市には商業施設やホームセンター、病院もあり、車で15分とアクセスも良いので日常生活で困ることは、ほとんど無いですね」。
さらに、自宅から徒歩数分の場所には町営温泉が。炭酸水素塩の熱い天然温泉は、冬場に重宝しそうだ。
「冬といえば、壮瞥町は道内では積雪の少ないエリアですが、昨冬はドカ雪で驚きました(笑)。ですが、東北に比べると雪が軽い!青森育ちの私には、ここでの雪かきはラクだと感じました」。

壮瞥の土地と人が紡ぐ
ストーリーのある「食」で
つながる場所を。

さらに、移住前に立ち上げたオンラインショップの『ヨツカド商店』にも大きな変化が!
移住当初は『ヨツカド商店』の名前でイベントに出店したり、前橋さんの自宅の一角で『ヨツカド商店のこみせ』を開いて販売していたのだが、2022年8月、ついに『ヨツカド商店』の実店舗を、「道の駅そうべつ情報館 i」の向かいにオープンできることになったのだ!
「地域おこし協力隊2年目に入るタイミングで実店舗を持つことができ、自分自身が一番驚いています。移住を決めた時から町内外の人が気軽に集まれる場所をつくりたいと考えていたので、町の皆さんや役場職員の方々に支えていただきながら実現できたことは嬉しいです」。
『ヨツカド商店』は、地域おこし協力隊が運営するコミュニティスペース『地域のあそびば ミナミナ』と同じ建物内にあり、観光・暮らし・遊びの拠点となる新しいスポットだ。
最初はただ漠然と大好きなコーヒーに携わる活動や、「食」をキーワードにして壮瞥町の観光を盛り上げていければと考えていた前橋さん。しかし、今は、壮瞥町でやってみたいことがある。
「シェフ・イン・レジデンス。農園キッチンです。首都圏にいるシェフが1週間ほど壮瞥町に滞在して、この土地ならではの食材を見つけて、ここでしか味わえない料理を作り、観光客や地元の人と味わう。「食」を通して、人と地域の価値をつなぐ場をつくりたいです」。
前橋さん自身も、旅先では地元のスーパーで買い物をして土地の「食」を楽しむ派。客室にキッチンや家電製品を設置したアパートメントホテルもやってみたいことの一つだと話す。
「壮瞥町には、土地の特性がもたらすストーリーのある食材がたくさんあります。"ジオの恵み"をテーマにした「食」のイベントを実現することが、つぎの目標です」。
2022年秋に「洞爺湖有珠火山マイスター」の認定審査に合格した前橋さん。活動する火山とともに生き、火山から授かった恵みに生かされる壮瞥町だからこそ、実現する夢があるのかもしれない。前橋さんの新しい景色が見える4つ目の"曲がり角は、すぐそこまで近づいているようだ。

Pick up

『ヨツカド商店』では、前橋さんが厳選したコーヒー豆の販売をはじめ、店内ではドリップコーヒーの他にミルクを使用したエスプレッソ系ドリンク、ナチュラルチーズや壮瞥町町産のりんごを使ったデザートなども楽しめる。

同じ建物内にある「地域のあそびば ミナミナ」は、地域おこし協力隊が運営するコミュニティスペース。前橋さんと今井さんは「ミナミナ」に常駐しており、町の情報発信やイベント運営なども兼任している。

通勤や休日の散策は自転車で。子どもの頃からカッコイイと思っていた昭和新山を毎日眺められる生活が気に入っている。有珠山や徳舜瞥山といった山並みに囲まれた町の風景や、日々変わる山の表情を見るのが好きだ。

人と人、たくさんのおいしいものが交わる場
ヨツカド商店

チーズ・自然派ワイン・コーヒー・おやつ・壮瞥町産フルーツのデザートやドリンク
火~木 9:00~19:00 | 金・土 9:00~22:30 | 日・月 定休 (冬期営業時間変更あり)

https://yotsukado-shouten.com/

そうべつを知り、そうべつをつなげる
地域のあそびば ミナミナ

まちかど案内所・イベントスペース・休憩スペース・ミナミナ文庫
火~金 10:00~17:30 | 土 10:00~17:00 | 日・月・祝 定休

https://sobetsu-minamina.studio.site/

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