そこは、プライベートビーチならぬ、プライベートリバー。
岡山昂一郎さん・咲音さんが暮らす壮瞥町・久保内地区。鳥の声や水のせせらぎに誘われてご自宅の裏手を歩くと、透明度の高い水質と林に囲まれた美しい「パンケ川」が流れている。
ご自宅の周囲には綺麗に積み込まれた薪や、廃材・廃タイヤを再利用して作った可愛らしい動物の遊具やプランターがあり、玄関先のチャイムもまるでアート作品のよう。
昂一郎さんは、『キコリワークス』という特殊伐採等の林業事業の代表を、咲音さんは『ウメタン』という名前でアート作品の創作活動をされている。どうりで、薪も、遊具も、"プロの仕事"だと納得した。
「山好きな2人ですけど、出会ったのは洋上でした」。
船で地球を一周する『ピースボート』、昂一郎さんはピースボートのスタッフ経験があり、高校卒業のタイミングでピースボートに乗船した咲音さんと出会った。その後、それぞれ仕事や旅を続け、遠距離で7年間、ご結婚後は千葉県館山市で暮らした。
「館山では林業に従事しました。その時期、日本列島を直撃した大型台風で房総半島、特に館山は大規模な停電・断水被害に見舞われました。林業の仕事も大部分が台風被害による危険木の処理に...。家に突き刺さった大木の撤去や裏山の処理作業とか。その経験が、特殊伐採の技術習得につながっています」。
しかし、仕事に自信を持ち始めた頃、転機となる大事故に遭遇した。
「低気圧が直撃し、倒れかけた大木を伐採している最中に、崖下に転落してしまいました」。
ドクターヘリで搬送された昂一郎さん、意識が戻ったのは病院のベッドの上だった。くも膜下出血に加え、肋骨や腰骨などの骨折で全治3ヵ月の重傷。
「今思えばオーバーワークで無理をしていたと思います。死を意識したあの時から、"拾った命"だからと、生き方・働き方を見つめ直すようになったと思います」。