農家カフェほのぼの村を開業

story#05

そうべつ人の暮らし
移住者インタビュー
小山内 登さん 栄子さんご夫妻

農家カフェ&リラクゼーション ほのぼの村 小山内 登さん 栄子さんご夫妻

登さん 青森県出身
栄子さん 今金町出身
▶ 室蘭市 〜 伊達市
▶ 壮瞥町
<移住歴12年>

導かれるように、今のライフスタイルへ。一つ決断を下すたび、次の未来がまた引き寄せられる。

畑も、鶏も、カフェも、自分たちで。夫婦ふたりで創り上げた、心地よい"村"。

壮瞥町の中に、"村"があると聞いて訪れてみた。
そこは役場などがある市街地から、オロフレ峠へ向かう道道2号線沿い。道路からまず見えてくるのは、赤い屋根が目を引く古民家風の一軒家だ。アプローチにはハーブやベリー、西洋野菜などが美しく配置されたガーデンがあり、奥には、童話に出てくるようなツリーハウスやガーデンハウスも見える。
"村長"の小山内登さんと奥様の栄子さんが出迎えてくれる赤い屋根の一軒家は、ご夫妻が週末の3日間だけ営業するというカフェ。平日は、各自の本業に専念するそうだ。カフェの近くには鶏舎や燻製小屋があり、さらに広大な敷地のおよそ2ha以上(約6,000坪)を占めているのは、トウモロコシやカボチャ、アスパラガスをはじめとする有機野菜の畑だ。小高い山の麓に広がる敷地には、草木が茂る場所や、澄んだ川も流れている。
『ほのぼの村』は、小山内ご夫妻が約12年の歳月をかけてコツコツと創り上げたもの。古民家に見えるカフェも移住後に建築したもので、内装の大部分はご夫妻が自らの手で施した。
「ここは最初、笹だらけでした。一から景観を作るのは大変でしたが、それ以上に面白さのほうが勝って、夢中になりました」と登さん。農業、養鶏、庭づくりにカフェ。やってみたいことは、すべて挑戦してきた。羨ましいほどの実行力を持つご夫妻だが、どんな人生を歩んできたのだろうか。

フルマラソンは無理、と医師の最後通告。大好きなトライアスロンを断念した先に...

おふたりが縁あって巡り逢うのは、北海道室蘭市。大手石油会社に勤務していた登さんが24歳の時に、20歳の栄子さんと結婚。2人のお子さんにも恵まれたご夫妻は、社宅住まいなどを経た後、室蘭の隣町、伊達市に一戸建てを構え、順風満帆なサラリーマン生活を送っていた。「私は当時、仕事の傍らマラソンとトライアスロンをしていました。妻は、ママさんバレーボールで活躍しエースアタッカー。2人ともスポーツが趣味でした」。
ところが30代半ばを過ぎた頃、登さんは膝を故障し、栄子さんも腰痛などに悩まされる日々。「病院を転々としましたが治らなくて...。そして大学付属病院のスポーツ外来で、"最後通告"を受けたんです。もうフルマラソンは無理ですよ、って」。大好きだったトライアスロン。だがこれ以上、身体に負荷はかけられなかった。
夢中になれるものを失い意気消沈していた登さんだが、ふと自宅の庭に目を向けた。時間を持て余して始めた土いじり。しかし、それが予想外にのめり込んだのだ。腰痛などに苦しむ栄子さんもまた、一緒に家庭菜園を楽しむように。当初は収穫した野菜を友人などに分けていたのだが、毎年購入してくれるようになった。「あの頃の農業は我流でした。カボチャの完熟も見極めきれずにいましたから」と登さん。「農業といっても自信がなくて。あの頃からずっと友人たちには助けられています」と栄子さん。身体に良い食事をと思って始めた有機野菜作りが、ご夫妻共通の趣味となり、そして夢となった。

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早期退職優遇制度を活用。農業を学び直し、洞爺湖周辺で土地探し。

もう一つの転機は、栄子さんが現在、本業としてインストラクターを務める『田中式健康体操』との出会いだった。呼吸法や体幹トレーニングでインナーマッスルを鍛え、心肺機能を高める体操なのだが、始めてみると夫婦ともども体調が上向いた。「元気になったらまた運動をしよう、と話していたんです。ところが実際に元気になると畑仕事に精が出て、運動をする暇がないほど農業を楽しむようになっていました」。
そこで、登さんは53歳の時、早期退職優遇制度を利用して会社をリタイア。退職後、1年間は職業能力開発校の建築科に通い、その後は十勝でチーズやベーコン作りを学んだり、農家にホームステイをしながら有機農業講座に通った。そして、いよいよ土地探しへ。登さんは趣味のバイクで、大好きな洞爺湖周辺を走って枝道を探索したそうだ。「300kmくらいは走ったかな。立地条件の良い場所は高価なので諦めかけていたのですが、偶然見つけたガラス工芸作家さんの工房で耐火煉瓦の話を聞くうちに次の出会いを紹介していただき、その先で、土地を売りたい人がいるという話が出まして」。
それが、壮瞥町弁景地区にある現在の土地との巡り合わせだった。「地主の岡崎さんはベテランの農家さんで人柄も良くて。すぐに購入を決断しました」。

支えてくれる人との絆で実現した『村祭り』。諦めずに想い続けることが、夢への近道。

笹だらけの土地の開墾から始まった壮瞥町生活。「計画性はあまりなかったんですよ。思いついたことを、とにかくやりました」と登さんは当時を振り返る。花木を植えつけても最初の2、3年は安定しなかった。その手入れをしながら新たな庭を作り、畑を耕し、2年目には大工さんと相談しながらカフェを建てた。さらに、畑は自然が相手。害虫対策や作物の食味の向上は、経験を重ねるしかなかった。やるべきことは絶えずあり、季節は幾つも巡った。
「やっと形になったなぁと思えたのは昨年くらいです。10年越しですね(笑)」。栄子さんは、「早期優遇で割増の退職金を頂きましたが、60歳まで貯蓄は目減りするばかりでした。今は年金収入があるので、当時より純粋に楽しめています」と話す。
カフェでは、登さんが丹精を込めて育てた野菜や自然有精卵を使用したメニューが楽しめ、食材は購入も可能だ。「平飼いでのびのび育った鶏の卵です。こうして畑の横で、お客様に直接味わっていただける場所を作るのが私の理想でした」。
鶏糞は畑の肥料に活用する循環型農業を実践。環境に優しく、食味も向上した。
「実は、5年ほど前に『村祭り』を開催しました。牧草地に舞台を作って和太鼓のステージを開いたり、ジンギスカンを囲んだり。とにかく自分たちが楽しいと思えることを企画しました」。移住前からの友人をはじめ、地主の岡崎さんなど移住後に出会った人々との絆で実現した『村祭り』。「定年退職後から始めていたら、気力・体力的に今のライフスタイルは無理だったかなと思います。夢は、想い続けることが大事ですね。一つ決断を下すと、不思議と誰かが助けてくれたり、新たな道が拓けてくるものなんですよ」と登さん。「私たちは常に周囲の人々に生かされているんだなと、感謝の気持ちでいっぱいです。移住して、生まれ変わりました」と栄子さん。決められたレールを走るのではなく、レールは自分たちで創る。登さんと栄子さんに叶えたい夢がある限り、『ほのぼの村』に完成形はないのかもしれない。

Pick up

庭を見渡せるカフェ。窓際には野鳥が羽を休めることも。心和むアンティークの家具や雑貨は、会社員時代に収集したもの。

生みたての自然有精卵を使ったオムレツやシフォンケーキがおすすめ。有機栽培のコーヒーやハーブティーとともにどうぞ。

登さんが作ったガーデンハウスは、次女の陽子さんが東京で学んだタイ古式マッサージのサロンに。空間にも癒されそうだ。

農家カフェ&リラクゼーション
ほのぼの村

北海道有珠郡壮瞥町字弁景196-12

TEL:0142-65-2510 営業時間:10:00〜17:00(金・土・日曜のみ営業)※12〜3月休業

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