そうべつ手帖

災害発生後、72時間をどう乗り越えるか?

地域おこし協力隊の"ナガトモ"です。

先日公開しましたブログ「防災教育を大切に思う」という記事にも連動する今回のブログ記事のテーマは・・・

「災害発生後72時間をどう乗り越えるか?」

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災害時を想定した講習会に行ってきましたのでそのレポートをしたいと思います。

災害発生後72時間を越えると生存率が大幅に下がるといわれています。

そのため救出・支援が行われるまでに、周りに人がいない状況でも自力で生き抜く力が必要になります。

このサバイバルマインドを育てる講習会「72時間サバイバルコーチ養成講座」という講習に参加してきたのですが、この講習会が北海道胆振東部地震から2週間後に開催ということもありとてもリアルな体験となりました。

この講習の目的は、災害発生時に子どもたちが自分の身を自分で守れるようになるために、8つのスキルを習得し、生き抜く力をつけようというものです。

このサバイバル教育を普及することによって災害発生時に1人でも多くの子どもたちがたくましく生き抜く力を身につけるだけでなく、社会に出てからも自らの人生を自ら切り拓く自立した若者がふえることを願って出来たプロジェクトです。

詳細はこちら→http://72h.jp/

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「なぜ生きる力を養う必要があるのか?」

災害時に子どもだけの力で生き残るというスキル、知識も必要ですが、子どもたちにとって最も必要なのは普段の生活の中で生きる力が発揮されているということです。

東日本大震災では2016年3月1日現在で消防庁がまとめたところによると、震災関連死を含めると死者は19,418人にのぼったそうですが、

日本の自殺者数というのは未遂も含めると3万人を超えるといわれています。(警察庁のHPによると平成29年に自殺で亡くなった方は21,321人でした)

生きたいと願う命がある中で、自ら命を絶とうという人が1日何千人といるという現実に直面したときに私は強い衝撃を受けました。

さらに未成年の自殺者もここ数年は微増にあります。

「命」とは?ということを考えさせられた私の思いは、生き抜く強さを備えた子ども達の育成という思いを生み出しました。

災害時を想定して様々なスキルを身につけながら「生きるとは何か?」や「命と向き合う体験」を繰り返していくことにより、日常生活においてもそのようなマインドが身についていくことと思います。

子どもたちに本当に必要なのはこの「生きる力」なのではないかと思うのです。


「5年後・・・10年後・・・を見据えて」

今世界中で起きている異常気象による自然災害の増加で、世界は様々な対策を検討しています。

例えば、イギリスやフランスの政府はディーゼル車とガソリン車を2040年までに販売を禁止するという方針を発表したり、中国にある200社を超える電機メーカーが世界へ台頭していくだろうとも予想されたり、アメリカの電気電子工学会は2040年までに74%の車が自動運転になるという予測をしていたりと、世界は最先端をみるみると進んでいきます。

もっと身近なところで言えば、映像デジタル化が5世代移動通信システムへ高速化され、超高精度な映像や3D映像が可能となり、AR空間(仮想現実)を手軽に体験できるようになる時代が来るとも予想されています。

今では私たちの手の中に当たり前のようにスマートフォンが普及され、情報をいつでも取れるような時代になりましたが、それをはるかに上回り、何が現実?何がリアル?という時代がこれからの子どもたちを刺激していくのです。

ファミコン世代で育った大人には理解が難しいかもしれませんが、VRという仮想空間の中で行うゲームで、私たちの本来備わっている力はどんどん失われてしまうのではないか?という懸念があります。

VR(バーチャルリアルティ)とは身体に装着する機器や、コンピュータにより合成した映像・音響などの効果により、3次元空間内に利用者の身体を投影し、空間への没入感(immersion)を生じさせるというものです。

実際に行かなくてもそれと同じような擬似体験をその場で出来てしまうことで、人が動かなくなってしまったり、人と人との間にコミュニケーションが生まれなくなってしまうかもしれない。あったとしても、その仮想空間で仮想人物とのコミュニケーションとなり、リアルな体験ではなくなってしまうのです。

そういう時代を予測したうえで、本当に必要な体験とはなんだろう?と私たち大人は子どもたちのために考えなくてはならないのではないか・・・と思うのです。


「72時間サバイバルコーチ養成講習で実際に体験したこと。」

・火(焚き火がつくれること)

・水(様々な携帯型浄水器を使ってみる、自分でろ過装置を作ってみる)

・シェルター(ロープワークを使い防水対策のされたテントをブルーシートでつくる)

・SOS(救助者にいち早く発見してもらうためにはどうしたらよいのか様々な方法を試す。非常用持ち出し袋について考える)

・食(非常食に一工夫を加えるアイディアを考え調理する)

・ファーストエイド(最低限の救急法を身につける)

・チーム(避難所の運営シュミレーションを行う)

・ナイフ(やさいやくだものの皮を安全にむけるようになる)

以上の8つの項目を2泊3日の時間で講習を受けました。

さらにこの講習を進めつつ、災害時を想定してということで、食事は非常食、さらに量も水も制限がありました。

1日目の食事はこちらの配給されたパンと水のみでした。

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「次の配給はいつくるかわかりません」という事でこの配給されたパンも考えながら食べなければなりません。

実際に東日本大震災のときに、おにぎりが1人1つしか配れない状況にもなったとお聞きしたので、そのシチュエーションがより身近に考えられました。

今回のこの8つの項目の中で一番大変だったのは、雨の中でブルーシートとロープだけでシェルター(テント)を張り、そこに2泊するということでした。

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まずは参加者でタープを張り、仕組みを知ります。

その後、1人2つブルーシートとロープが配られ、雨の中、シェルターの設営をしました。

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ロープワークも学び、どんなテントなら快適に過ごすことが出来るのか?

また雨が浸み込み体が濡れてしまうと、低体温症になり命を落とす恐れがあるので、雨の入らない工夫も必要になります。

この日は9月下旬でしたが気温が10度を下回りとても寒かったですが、無事に2泊を乗り越えることが出来ました。

2日目の食事は、朝~昼すぎまでは前日に配られたパンのみで過ごしました。

火のプログラムで火おこしを行いそれで水を沸かし、アルファ米を食べました。

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ただ、このとき食べられたのはおにぎりひとつ分ほどで空腹は少し満たせた位。災害食は決して美味しいと思えるものではありません、だからこそ何をどのくらい備えておくか?というのはとても大事なことだと気がつきました。

そして久しぶりに美味しいと感じられたのが、パンの入っていた空き缶で作るご飯でした。

空き缶に米と水を入れ、アルミで蓋をし、ご飯を炊きます。

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この炊いたご飯に卵スープのもとをいれてかき混ぜると、ちょっとしょっぱくなり舌もお腹も満たしてくれました。

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こんなにご飯を美味しいと思えるんだと、感動しました。

最後にもうひとつご紹介したいのが、災害時を想定して何を備えるか?

についてです。

市販で売られている避難グッズは、いったい誰がどこに非難することを想定しているのでしょうか?

小さななお子さんがいる方は、お子さんに災害食を食べさせたことがあるでしょうか?子どもは果たして食べるでしょうか?

子どもが食べなれていて、そして保存が利くもの・・・考えたことはありますか?また、お水はどのくらい必要でしょうか?

例えば大人が2人、子どもが2人の家庭で、1人2リットル×3日分。すごい量になりますがそれをもっていけますか?そもそも持っていく必要がありますか?どこに避難するのでしょう?

と・・・考えることは沢山あるのです。

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この写真はこの講習会の講師を務めてくれた講師の方の備災道具です。

「私は災害時に避難所には入りません。そして子どもに会うまでは絶対に死にません」

というすごい覚悟をお聞きして、自分の備えの甘さに考えさせられました。


「まとめ」

災害とは今自分が住んでいる地域だけでなく、国内、国外どこで何が起こるかわかりません。

そういったことを想定した上で、備えることが必要なのと、避難所に入ることが想定での避難グッズと、入らないことが想定での避難グッズでは備えるもの、持ち出すものが違うということも分かりました。

また、災害のタイプによっても気をつけなければならないし、備えるものも変えなければならない。

特に北海道は冬と夏では大違いです。

様々なことを想定してシュミレートできるこういった生きた体験はやはり必要なことだと感じました。

このブログを読んで自分のことと照らし合わせて考えていただけたら幸いです。

私自身も新たな目標も出来ましたのでチャレンジしていきたいとおもいます。

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