そうべつ手帖

ジオパーク講座「ヒグマの話」を受講して

こんにちは!北海道壮瞥(そうべつ)町地域おこし協力隊、熊好きの"おしみ"こと、清水です。

2022年2月5日(土)、洞爺湖有珠山ジオパーク推進協議会の講座
「ヒグマのことを知っていますか?」に参加しました。
(北海道のまん延防止等重点措置適用に伴いオンラインで開催。)

この講座を受けた理由というのは、「熊が好き」という理由だけでなく
「熊と人間の悲しい事故を起こさない為に、自分に出来ることがないか?」
という思いからでした。

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「ヒグマのこと知っていますか?」野外活動の安全のために

講師は北海道立総合研究機構 エネルギー・環境・地質研究所
専門研究主幹 間野 勉先生。

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熊や事故について学び、正しく怖がり、適切な行動をとる

講座では、熊の生態(暮らし、身体、行動)についての話。
そして、人身事故の詳しいデータを見ながら
その過程やパターンについて学びました。

この講座の目標は『クマと折り合いをつける』。

正しく怖がって、落ち着いて適切な行動をとること。

そして、忘れちゃいけないのが
ヒグマの問題は人間社会の鏡だということです。

熊の生態について知っていますか?

①「冬眠明け、熊が活動しだすのはいつからいつまで?」
②「熊は何を食べる?」
③「熊はなぜ町に出てきたの?」
④「熊はなぜ人を襲うの?どういう時に襲うの?」
⑤「熊と出会ってしまったらどうする?」

『この質問に答えられる人がどのくらいいるのだろう?』
こんな疑問が生まれます。

答えはこちら。

①熊は冬眠明け4月頃から活動し、9月頃冬眠の準備を始めます。
②春は山菜。夏は蟻など昆虫。秋は木の実などを食べます。(雑食)
③山に食べるものがないから。人間が置いていったゴミから、人間の食べ物の美味しさを知って。等
④怖くて、びっくりして攻撃。子どもを守る為。食べ物(鹿の死体)をとられまいとして。
⑤熊鈴などで人間がいることを知らせて、まずは会わないようにする。
⑤落ち着いてゆっくり距離をとる。(大きな声を出して熊を驚かせない。)
⑤死んだふりはしない!熊スプレーを持ち歩く。

こういう知識があれば
「山菜採りやきのこ狩りの時期は、熊も山で食べ物を探しているから注意しなくちゃ!」
という考えになり、危険回避が出来るわけです。
(※山菜採りなど夢中になって、知らないうちに熊の近くまで行っていてしまい
驚かせて襲われる事故は毎年起きているそうです。)

熊の視点で話をしてみましょう。

今までは木の実等がたくさん採れる森に住んでいました。
しかしある日、怖い生き物が自分たちの住んでいる森にやってきて
木の実が生っていた木を切り倒し、実のならない木を植え、
山を削り、見たこともない四角くて大きな建物を作りはじめました。
(人間による経済活動。環境の変化。)

住む場所も食べる物もなくなり、旅をすることになりました。
その途中で見たこともない、けれど美味しい食べ物を見つけます。
その美味しい食べ物は、あの怖い生き物たちが食べているものだと知ります。
(学習。)

森には食べ物がないのでお腹はペコペコ。
仕方がないので、怖い生き物のいる場所の近くまで行ってみました。
すると、森で食べていた物の何倍も美味しい食べ物を見つけました。
そして、ずっと怖いと思っていた生き物が近くに現れました。
ビックリしたけれど、自分たちを襲ってきません。

「無害だ!怖くない!」と分かりました。

冬になる前にたくさん食べて栄養を取らなくちゃ!」とまた食べ物を探します。

途中、眩しい光と音を出す、四角い生き物が追いかけてきました。
最初はびっくりしたけれど、「襲ってこないから危険じゃないんだ。
さて、もっとあっちの方まで行ってみよう!」...
(馴化。人馴れ。)

熊も学習して人馴れをします。
だから「人は怖い!関わっちゃダメ!!」と、熊に学習させることが必要です。

このような熊の基本的な生態を知ることで
正しく怖がって、落ち着いて適切な行動がとれます。
これが『クマと折り合いをつける』ことに繋がります。

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認識の違いを感じる

地域おこし協力隊に着任してからずっと「熊好き」を公言してきたわけですが
実はたまに"温度差"を感じることがありました。

それは「熊が好きです!」と言った時です。
相手の空気が一瞬で変わり(擬音語で例えるなら「ギョッ」)
ギョッとした顔で見られたり、熊がいかに恐ろしいか話しだしたり、
「熊が好きだなんて変だ」と遠回しに言ってくる人もいました。

(※上記の方と遭遇するのは極まれにです。
ほとんどの方は"おしみちゃん、熊好きだから!"と熊情報を教えてくれたり、
家で持て余してる木彫り熊を譲ってくれたり笑、とても良くしてくれます。)

そういう時「犬が好きです。馬が好きです。ゾウが好きです。
それと何が違うんだろう?」と心の中で思っていました。

福井で育った私と
北海道民の熊に対する考え方や感じ方の違いかな?とも思っていました。
(※福井でも人と熊の人身事故は起きています。)

しかし、私なりに熊の生態について勉強したり
こうやって講座を受けたことで感じたのは
「(怖がってる人は)熊の生態についてあまり知らないのでは?」
そして、報道されるニュースを見て
「"熊=襲ってくる、どう猛な生き物"という固定観念を持っている人が多いのでは?」
「熊に対する認識の違いがあるのでは?」ということ。

例えば

あなたが母親でまだ1歳くらいの子供と一緒にいる時
目の前に得体のしれない生き物が急に現れたらどうしますか?
子どもを守る行動を取りますよね。

熊もそうなんです。
「熊の生態について...」でも記載しましたが
攻撃するのには理由があるんです。

「認識」とは、ものごとをはっきりと見分けて判断する、理解するという意味です。

熊について「認識」すれば、考え方や行動も違ってきます。
些細なことだけど大きな差だと感じました。

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熊だけでなく、動物や地球との共存・調和する社会へ

今回「ヒグマのこと知っていますか?」の講座を受けて
1番に『知ることの大切さ』を学びました。

知ることで、自分たちに出来ることが分かります。(それがとても些細なことでも。)
それを実行することで、ヒグマにも人間にも環境にも優しく
過ごしやすい社会(地球)につながるのではないか?と思います。

ヒグマだけじゃありません。
昨今注目されている、国連が発表した「SDGs(持続可能な開発目標)」も
同じじゃないかと思います。

大きな目標ですが、個人が普段から簡単に出来ることって
意識していないだけで意外とたくさんあったりします。

まずは知る。
そして実行する!

自分の心の軸の部分で、いつも意識していきたいと思います。

ちょっと壮大になっちゃいましたが笑
この記事を読んで、少しでもヒグマのことを知って
山に入る時(キャンプなんかでも!)に思い出して
ちょっと意識して、行動してもらえたらと思います。

【講師/間野 勉 先生について】
北海道立総合研究機構 
エネルギー・環境・地質研究所 
専門研究主幹
研究分野は、野生動物生態学/野生動物管理学 等。

「野生動物と人間が適切な関係を築けるよう、調査研究をしています。
生物学だけでなく、社会・経済領域にも踏み込んだ状況と解決策の提案を心掛けています。」
(※ジオパーク講座の案内テキストから引用)

【洞爺湖有珠山ジオパーク】
今回のオンライン講座「ヒグマのことを知っていますか?」を主催。

【おまけ】
かわいい熊の話はこちら(以前に書いたブログ)をご覧ください。
"熊好き"地域おこし協力隊の『熊活』
熊好きおすすめの壮瞥観光スポット「昭和新山熊牧場」

壮瞥町の熊スポットといえば...昭和新山熊牧場
GWは子ぐまのお披露目時期です!
この時期しか会えない!まるでぬいぐるみのような子ぐまたち。
クッキーをおねだりする芸達者な熊たちにも会えます。
暖かくなったら是非彼らに会いに行ってみてください。

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